公益法人運営

立入検査とは

公益法人の立入検査とは、公益法人認定法第27条第1項に基づいて、主務官庁が公益法人の事務所に立ち入り行う手続き。

基本的には3年に1度程度の頻度で立入検査が行われていますが、立入検査に関しては世の中に情報が少なく、公益法人の方々から質問を受けることが多々あります。

また、現場の声としては「立入検査を初めて受けるけど、何を検査されるか知らないので不安」「そろそろ立入検査がある見込みだけど、前回の立入検査に対応した職員や理事が入れ替わっていて無事対応できるか心配」「立入検査の事前対策があれば知りたい」といったお話しをよく耳にします。

この記事を読まれている方の中には、そのような思いの理事・事務局の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

以下では「公益法人の立入検査では具体的にどのような確認が行われるか」からはじまり「立入検査の対策はどうするべきか」など、実際の対応まで解説していきます。

この記事は、どちらの主務官庁から立入検査を受けるかに関係なく読むことができるのでご安心ください。

なぜなら、内閣府の立入検査、都道府県の立入検査、その他いずれにおいても立入検査の確認事項は基本的に同じだからです。

特に、記事の後半で紹介している立入検査のチェックリストは全ての公益法人にとって有用なものであると断言できますので、是非ご活用下さい。

立入検査についてゼロから知りたい方は勿論、何度か立入検査を受けられて次回に備えたい方まで、この記事で知識を深めてより良い公益法人運営のお役に立てれば幸いです。

立入検査の具体的内容とポイントをザックリ解説

具体的に立入検査で何が行われるかというと、主務官庁の方々が実際に公益法人の事業所へ来られ、書類の確認や担当者にヒアリングを行います。

立入検査の観点は「公益法人として適正な運営がなされているか」で、細分化すると事業、ガバナンス、会計、という3つのポイントから行われます。

ポイント

公益法人の立入検査は、公益法人として以下の3つのポイントにおいて適切か否かの確認が行われる。

  • 事業
  • ガバナンス
  • 会計

それでは、まずこの3つのポイントそれぞれについて解説します。

ポイント1 事業

まず1つめのポイント、立入検査において事業をどのように確認するかというと、一言で言えば「 事業が、届出どおりに行われているか」の確認です。

行っている事業の中でも、特に公益事業についてはしっかり確認があると心得てください。

つまり「公益事業として行っている事業が、届出のとおり公益性をもって実行されているか」が重要で、実際にHPでどのように広告をしていたか、どのような人が参加したか、など事業の実態を質疑応答し、資料と合わせて確認する手続きを受けるのです。

ポイント2 ガバナンス

次に2つめのポイント、ガバナンスですが日本語に直訳すると統治・管理です。

そして公益法人における統治・管理とは、内部統制を意味します。

では、内部統制という聞きなれない言葉で前置きが少々長くなりましたが、立入検査においてバナンスを確認する手続きについて以下で簡単におさえましょう。

まず必ず立入検査において確認されるのは、公益法人の内部規則の中でも根本となる定款に定められた手続きが守られているか。

具体的には、定款で定められた法人の機関(社員総会・評議員会・理事会など)で、意思決定手続きが適切に行われているかを質疑応答・書類閲覧で確認します。

特に重要なのは、招集通知の発送時期、議案内容、決議方法、議事録など。

さらに、定款のもとに定められている規程・規則が守られているかも確認の対象です。

細かい部分としては、規程・規則で定められていなくとも「発注の際に相見積もりをちゃんと行っているか」「監事の理事会出席率は極端に低くないか」などを確認する場合も。

ポイント2の冒頭でふれましたが「ガバナンス」とは「内部統制」の観点にたった確認であるため、単に「法人内の規則を守っているか否か」だけにとどまらず「規則自体を適切に整備しているか」も重要であることにご注意ください。

ポイント3 会計

最後に3つめのポイント、会計の中で必ず第一に確認があるのは財務三基準についてです。

財務三基準とは公益法人における重要な財務上の基準で「ゼロからわかる公益法人とは?」の記事で大まかに記載しましたので、ご一読いただければ幸いです。

もし直近決算でこの財務三基準が満たせていない場合、立入検査において

「基準を満たせていない原因は何か?」「今後どのような解決策を設けているか?」「計画は適切か?」

などの確認があると想定されます。

それらにおいて問題がないようでしたら、次は帳簿の閲覧や領収書類を閲覧し、適切に会計処理が行われているかの確認。

公益法人では監事による監査が行われているので、通常であればここで大きな問題となることはありません。

一方で、按分比率が公益認定時と異なり恣意的に財務三基準を満たすように会計処理されている場合など、会計処理自体が適切にされていないとなると大問題です。

そのような状況であったにもかかわらず法人内で放置されている場合

「上記ポイント2のガバナンスはどうなっていたのか?」「上記ポイント1の事業は公益認定時と違っているのではないか?」

といったように、公益法人としての根幹を揺るがす問題となるのでご注意ください。

立入検査への対策

立入検査対策として何をすべきか?は公益法人の状況によって様々ですが、確実にやっておくべきことはあります。

そして、その「やっておくべきこと」とは単に立入検査を無事に乗り切るためではなく、公益法人としてあるべき姿を維持するためにすべきことであるため、その場しのぎで済むものではありません。

では何をすべきなのでしょうか。

答えは簡単で、この記事でふれた3つのポイントにそって法人の現状を確認し、できていない部分は早急に改善しましょう。

とはいえ、具体的に何をすればいいの?と多くの方は悩まれると思います。

そこでこちらのチェックリストをダウンロードして活用しましょう。

公益法人立入検査チェックリスト

このチェックリストは、主務官庁の中でも一部の主務官庁で公表されていた書類を集めたもので、実際に立入検査の際に担当官の方が利用しています。

公益法人としては事前にこのチェックリストにそってセルフチェックを行うとよいでしょう。

zipファイルの中にはPDFでA~Dの4つの様式でチェックリストが入っています。

この4つは単に様式やチェック項目の粒度が異なるだけで、内容としては同じであるため使いやすいものをご利用ください。

また、よくある指摘指導のファイルから取り掛かり、その後にチェックリストの細かい部分を確認していくのもおすすめです。

このチェックリストを活用して、より良い公益法人の運営を進めて頂ければ嬉しいです。

まとめ

公益法人の立入検査は基本的に3年に1度はあります。

そのうえで直近の立入検査において指摘事項が多ければ、2年に1度になったり、指摘事項がなければ5年に1度になったり。

立入検査を怖がる方もいらっしゃいますが、立入検査は基本的に公益法人の適切な運営と自立を促進するための手続きであるため、普段から正しく法人を運営していれば怖いものではありません。

そもそも公益認定を通過しているのですから、その認定時の状況から逸脱していたり、法人内のルールを守っていれば問題ないのです。

そして、指摘があれば問題に対して真摯に向き合い改善をしていくことが重要。

公益法人とは税制上の優遇を受けている以上、利害関係者は全国民ともいえるため、負っている責任は軽くありません。

立入検査への対策・立入検査後の改善を生かして、公益法人としてふさわしい運営を行い、より世の中がよくなっていくことを願ってこの記事の締めくくりとさせて頂きます。

  • この記事を書いた人

大下航

公認会計士・税理士の大下航です。 監査法人・会計事務所勤務・税理士法人パートナーを経て独立。国内外の幅広い業種・法人形態の会計税務に対応。 公益法人の役員や顧問としては、ITを利用して業務の効率化を進めることが得意。 「一人でも多くの方に公益法人のことを理解して頂き、公益法人の活動を通して世の中が良くなっていけば~」という思いで記事を書いています。

-公益法人運営