公益法人運営

2025年(令和7年)4月施行 改正公益法人法(公益認定法)対応「変更届」「変更認定届」

公益法人の「変更届」「変更認定届」とは

公益法人の変更届と変更認定届とは、公益法人を運営するにあたって適時提出が必要な書類。

具体的には、公益法人において変更届・変更認定届の提出対象となる事象が発生した、もしくは発生する予定であれば、公益法人informationを通して電子提出を行います。

実務上よく質問されるものとして「この変更は変更届と変更認定届のどちらを出せばいいの?」「この変更はそもそも書類提出する必要があるほどの変更なの?」といったご質問があります。

つまり書類の書き方などを検討する前の時点、そもそもどの書類を提出すれば良いのか、そもそも提出すべきなのか、という大前提の部分から判断を悩まれているようです。

この記事を読まれている方の中には、公益社団法人や公益財団法人を運営する中で「変更届や変更認定届を提出する必要があるかもしれないがどうすれば良いかわからない」と迷われている状況の方もいらっしゃるかと思います。

以下では、まず「変更届」と「変更認定届」それぞれの書類について説明したうえで、具体的にどのような場合にどちらの書類を提出すべきか等を解説します。

「変更届」と「変更認定届」名前が似ていますが、性質は全く異なります。

また、中には公益法人の状況変更について、事前に提出する必要があり、かつ、手続き完了まで数か月程度の時間を要する場合があります。

つまりそのような場合、ある程度スケジュールを組んで余裕をもって進めないと、届出書類の提出状況がボトルネックとなって公益法人の活動が制限される可能性があるのでご注意ください。

2025年(令和7年)4月に公益法人法(公益認定法)の改正がありましたが、この記事で解説している「変更届」「変更認定届」は、その改正の影響があります。改正公益法人法(公益認定法)の影響がある部分を合わせて確認しましょう。

この記事の内容から日頃判断悩んでいる部分について明確になり、公益法人の円滑な運営に役立てて頂ければ幸いです。

2025年(令和7年)4月施行 改正公益法人法(公益認定法)の影響

まずはじめに、大まかに公益法人法の改正内容を分類すると、改正は以下の3つのポイントがあります。

ここでご注意頂きたいのですが、この記事では変更届・変更認定届に関する解説をしますので、改正公益法人法(公益認定法)の中でも関係がある部分に絞って解説します。

具体的に変更届・変更認定届に関係があるのは、下記公益法人法の改正ポイントのうち、ポイントの2つ目「行政手続の簡素化・合理化」の部分です。

公益法人法の改正全般については別の記事で解説しますので、そちらをご参照ください。

公益法人法の改正 3つのポイント

  • 財務規律の柔軟化・明確化
  • 行政手続の簡素化・合理化
  • 自律的ガバナンスの充実と透明性の向上

このポイントの2つ目「行政手続の簡素化・合理化」とは変更認定に関する手続きの変更等を指しており、公益法人が自らの判断で柔軟・迅速な事業展開をできるよう、届出で事業変更可能な範囲を拡大しました。

この改正を掘り下げて「変更届・変更認定届にどのような影響があるか」をみていきましょう。

具体的には以下の点が定められております。

行政手続の簡素化・合理化の内容

  • 収益事業等の内容の変更は、変更届出とする
  • 事業の一部廃止は、変更届出とする
  • 事業の統合、再編、承継その他の変更であって当該変更後の事業が引き続き公益目的事業に該当することが明らかであるものは、変更届出とする
  • 請書記載事項の変更を伴わないものについては、申請書の記載事項そのものを見直すことで対応する

「申請書記載事項の変更を伴わないもの」については、事業報告等の定期提出書類の記載事項の明確化と一体的に行われる。

色々と書かれておりますが、大まかにいうと改正前は変更認定届の提出が必要だったものの一部について、変更届の提出で済むようになりました。

よって、この公益法人法の改正の結果、変更認定が必要な事項は以下の2つに明確化されています。

変更認定届の提出が必要な事項

  • 公益目的事業の実施区域又は事務所の所在場所の変更であって、行政庁の変更を伴うもの
  • 公益目的事業の種類又は内容の変更(変更届出対象に定めているものを除く)

それでは変更認定届の提出が必要な2つの事項についてそれぞれ解説します。

公益目的事業の実施区域又は事業所の所在場所の変更であって、行政庁の変更をともなうもの

そもそもですが「公益目的事業の実施区域又は事業所の所在場所の変更」については2025年3月までの内容と変更なく、変更届となります。

ただし「公益目的事業の実施区域又は事務所の所在場所の変更」があったうえで「管轄の行政庁が内閣府から各都道府県に変更になる場合、または各都道府県から内閣府に変更になる場合」のみ変更認定の手続きが必要となります。

この文言の中でも「公益目的事業の実施区域又は事務所の所在場所の変更」は読んで字のごとくで、場所の変更であることは理解しやすいと思います。

そこで次に「管轄の行政庁の変更がある場合」がある場合はどういった状況か整理しましょう。

公益法人の管轄がどこになるか~について整理すると、公益目的事業の実施区域又は事業所の所在場所が複数に及ぶ場合には内閣府が管轄となり、公益目的事業の実施区域又は事業所の所在場所が特定の都道府県のみの場合には、当該都道府県が管轄となります。

したがって、公益目的事業の実施区域又は事業所の所在場所が特定の都道府県から複数の都道府県に範囲を広げる場合、または複数の都道府県から特定の都道府県に限定する場合には「行政庁の変更」となり、変更認定の手続きを行うことになります。

(例)実施区域又は事務所の所在場所が・2箇所以上(都道府県Aと都道府県B)→1箇所(都道府県Aのみ)に変更

※この場合、行政庁が内閣総理大臣から都道府県Aの知事に変更

公益目的事業の種類又は内容の変更

まず以下の事項については「変更認定届」ではなく「変更届」の対象となります。

公益目的事業の変更の中でも変更届で済む事項

  • 公益目的事業の一部廃止
  • 事業の統合、再編、承継その他の変更であって当該変更後の事業が引き続き公益目的事業に該当することが明らかであるものとして、内閣総理大臣が定めるもの
  • 公益目的事業の一部廃止、公益目的事業の統廃合のほか、申請書記載事項の変更を伴わないもの

そうのえで、上記以外の公益目的事業の変更又は内容の変更があった場合は変更認定届の提出が求められますが、この変更認定届が必要な内容・理由については「公益法人となる際の公益認定手続」の背景にある制度の根底をおさえれば問題ありません。

つまり、公益法人設立の際に公益認定を受ける際に公益目的事業として認められるためのチェックがありますが、その内容について再度チェックが必要となるもの全てが変更認定の対象となるとお考え下さい。

(例)公益目的事業で奨学金事業のみを行う法人が・新たに公益目的事業として検定事業を開始・奨学金事業から体験活動事業に変更

公益認定を受ける際に、様々な事項について確認・審査を受けるのですが、その確認済事項について後々変更が制限なくされてしまうと「公益認定の審査時だけちゃんとしとけば後は自由勝手に公益法人を運営できてしまう」となってしまいます。

公益法人は様々な恩恵をうけつつ、社会的に重要な役割を果たす法人であるため、そのような潜脱行為を防ぐためにも変更認定届は重要な届出書類であり、その審査手続は厳格であるべきと心得ましょう。

公益法人の変更届と変更認定届をまとめて整理

さて、ここまで長々と公益法人法の改正で「変更届」「変更認定届」それぞれについて解説してきました。

何となく「変更届」は簡素な手続きで「変更認定届」は大変な手続き、制度改正で「変更届」で済む範囲が広がったことは理解頂けたかと思います。

そのうえで「具体的にそれぞれどうすれば良いのか?」「変更届と変更認定届の違いは何となく分かったけど、手続は何が違うのか?」をまとめて整理してみましょう。

変更届と変更認定届をまとめて比較

変更届と変更認定届を比較すると以下の表のようにまとめられます。

ここまでの解説で書きましたとおり、変更届の方が範囲が広い一方で手続きが簡略的であることがみてとれます。

変更届変更認定届
提出事項一部の軽微な変更、行政庁から認定を受けている申請書(事業内容等を記載)の記載事項の変更を伴わないもの
【例】
公益法人の名称又は代表者の氏名の変更
理事、監事及び評議員の氏名の変更
会計監査人の氏名若しくは名称の変更
理事、監事及び評議員の報酬等の支給の基準の変更
定款の変更
行政庁の変更を伴わない公益目的事業の実施区域又は事業所の所在場所の変更
公益目的事業の一部廃止
公益目的事業の統廃合
収益事業(又はその他事業等)の内容の変更
・行政庁の変更を伴う公益目的事業の実施区域又は事業所の所在場所の変更

・公益目的事業の種類又は内容の変更(変更届の対象とされているものを除く)
提出先主務官庁(公益法人informationより提出)主務官庁(公益法人informationより提出)
提出期限変更が行われた後速やかに変更が行われる前の申請が必要
提出書類変更届出書一式・変更認定申請書一式
・添付書類あり(場合によっては事業計画書・収支予算書・見込数値の貸借対照用など作成必要)
審査なしあり
提出スケジュールの注意特になくて良い要注意

ここで最もご注意頂きたいのは、記事の冒頭でも書きましたが変更認定届は提出期限が変更の前であること、審査があることです。

そのため、提出するにあたってスケジュールを組み、事前に事業の状況など公益法人全体の動きに合わせて書類の作成・提出をする必要があることにご注意ください。

変更認定申請を行う際の注意事項

  • 変更事項が発生する前に提出が必要
  • 審査がある
  • 作成書類が多い(場合によっては変更事項を反映した事業計画書・収支予算書・見込貸借対照表を作成)
  • 書類作成や機関決定、審査対応のため余裕のあるスケジュールを組む必要がある。

よくある事例としては「新しく公益事業を始める予定であったが、変更認定申請が完了しておらず予定していた公益事業を開始できない」といったことがあります。

新しく公益事業を始めようとする場合、公益認定時に受けたような審査を変更認定申請書の提出と合わせて受ける必要があるのですが、変更認定申請は、変更内容を織り込んだ事業計画や予算書、さらにはその変更の影響を含めた貸借対照表の予想数値をベースに申請書の作成、審査が行われます。

変更内容によっては規程規則等の改廃や改訂が必要なのは勿論、理事会や総会で承認を得ておく必要もあるため、機関決定もあわせて事前の準備期間を別途考慮に入れる必要があるのです。

私の関与する状況からの感覚ですが、変更認定申請を行う際は、書類作成・主務官庁との事前相談・機関決定のための準備など含め、認定を受ける6カ月前くらいから着手することをおすすめします。

最低でも3か月はかかると見込まれるので、余裕をもってスケジュールを組みましょう。

まとめ

この記事では改正公益法人法(公益認定法)をふまえて「変更届」と「変更認定届」について解説しました。

一言でまとめると

「変更認定は事前申請で、審査も必要。その際に書類作成や機関決定が必要となるためスケジュール要注意。」

「変更届は事後の届出のみで良い。」

です。

最後になりますがよく質問される内容で、

変更認定申請を行う際に「変更内容を反映した事業計画、収支予算」を作成し総会・理事会決議をとるが、そもそも変更認定申請が認められない可能性もある。そのように不確実な事業計画、収支予算を作成し、理事会で承認しても良いのでしょうか?

という質問があります。

そのような場合は変更認定申請に関する総会・理事会決議において「変更内容を反映せず通常通りの事業計画、収支予算」と「変更内容を反映した事業計画、収支予算」の2つのパターンを作成し、両方とも承認を得ておくことをおすすめします。

繰り返しになりますが、変更認定については事前申請で審査があるためくれぐれもご注意ください。

  • この記事を書いた人

大下航

公認会計士・税理士の大下航です。 監査法人・会計事務所勤務・税理士法人パートナーを経て独立。国内外の幅広い業種・法人形態の会計税務に対応。 公益法人の役員や顧問としては、ITを利用して業務の効率化を進めることが得意。 「一人でも多くの方に公益法人のことを理解して頂き、公益法人の活動を通して世の中が良くなっていけば~」という思いで記事を書いています。

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